新たな恋 VOL①
また恋をしてしまった―。惚れやすい。自覚はある。
どれだけ好きになれば終わりは来るのだろう。次は一体誰か・・・
フクロウである。
地元情報誌で、富山県高岡市にふくろうカフェなるものがあることを知って
お邪魔した。
ご夫婦で営んでいる「アクアフォレスト 水の森」というスポットだ。
フクロウ部屋に入ると、さまざまな種類のフクロウが佇んでいた。
私は初めて見た時から心を打ちぬかれた。後頭部に漂うモフモフ感。
ビー玉のような目で見つめられたらいちころだった。
エサやりや、手乗せや、フライトを体験しながらフクロウの生態に触れていく。
私は普通にカフェに来て楽しんでいる客とは明らかに違う興味を示し始めた。
もうなんなら「フクロウ欲しいんですけど」という勢いだ。
他のお客さんが帰った後、私はご夫婦と話し込んだ。
一体いくらで買えるのか?エサは何か?粗相はするのか?
どんな種類を飼うのがいいのか?
私の熱量を感じたご夫婦が、閉店後に腰を据えて付き合ってくれた。
価格は15万円から60万円ほど。
エサはヒヨコやウズラの肉。マウスも食べるらしい。
止まり木を作ってくくっておけば、そこにチンとしているらしい。
その下に新聞紙などをおいておけばトイレになる。
大きな声で鳴くこともないので、近所迷惑にもならない。
ただ帰巣本能が乏しいので、飛んで行ってしまったら戻ってこないかもしれない。
飼いやすいのは、人間の顔のようなメンフクロウか、ベンガルワシミミズク。
視覚的に言えば、メンフクロウは「フクロウ感」より「人間感」が強めだ。
私は体験でも触れ合った、ベンガルの凛々しい顔の方が好みである。
部屋にフクロウがいる暮らし。考えただけでよだれが出るほど魅力的だ。
フクロウに見つめられながら執筆し、フクロウに見つめられながらごはんを食べ、
フクロウに見つめられながら眠りにつく。
外出するときはフクロウに見送られ、帰ってきたらフクロウがいる。
あぁ、書いていてなんの違和感もない。
もうフクロウのいる生活がそこにあるようだ。
私は何の気なしに「フクロウ飼うわ」とだけ彼にラインした。
と、即座に「やめてーーーーーー、」と来た。
最後の句点は何なのか?慌てふためきが感じられる。
「え?嫌なの?ちんとしてるよ 止まり木さえあれば」
「だめだめだめー 熱帯魚どうするの?」
熱帯魚がいることなんて、まるで関係ない。共生すればいいではないか。
「生肉食べるんだよ」「イグアナより嫌です」と取りつく島もない。
ウサギが白目をむいて「NO!」と言っているスタンプが大量に送られてくる。
「あなたが大切だから、ゆっくり話聞くね」と送ってみる。
「ん?聞く?いやいやいや聞かなくても NO!」またウサギが白目をむいている。
挙句の果てには「手乗り文鳥は飼ったことあるの。ちっちゃくて可愛かったよ」というではないか。
は?手乗り文鳥!?そんな可愛らしいものでお茶を濁さないでほしい。
「ステーキが食べたい」という人間に対し、ウインナーを出してくるようなものだ。
私はフクロウが欲しいのだ。
モフモフで、勇ましく、「います!」という存在感たっぷりのフクロウと暮らしたいのだ。
新たな恋 VOL②に続く