ayakonoheya’s diary

日々のことを、ありのままに

2023滝修行ウラ話②

(2023滝修行ウラ話①から読んでね つづきものです)

 

今年の滝修行は、カメラマンと私の2人で行くことになっていた。
アシスタントが、家の用事で休みを取っていたのだ。
貴重品を預かってほしかったり、マイクを渡してほしかったり、SNS用の写真を撮ってほしかったり・・・色々してほしいことはあるのだが、やむを得ない。

いつも3人でしていることを、2人でやるしかない。

 

7:00に会社を出発。8:00前に滝修行の舞台、富山県上市町の大岩山日石寺(おおいわさん・にっせきじ)に到着した。9:00から一般の参拝者が浴びているシーンを撮影した後、各テレビ局の記者やアナウンサーが体験する流れだ。勝手知ったる現場である。

 

白装束を借りるとき、願い事を書くお札も一緒にもらった。こんな演出は今年初めてだ。緊張で考える力があまり残っていない中、えいっと思いつくままに書いた。「元気に、好きな仕事!」と。そう。健康に好きな仕事が納得いく形でできたら、それ以上望むことはない。

「元気に好きな仕事!」

白装束に着替えてから滝を浴びる前までの間、私は自分のスマホで動画を撮っていた。「きょうはアシスタントがいないので浴びているシーンは撮れませんが、今からあの滝を浴びてきます」みたいなことを言いながら。するとそれを聞いていた方が「僕がそのスマホで撮りましょうか?」と言ってくださった。

 

大変、大変、ありがたい。そのお気持ちは本当にありがたい。
そうできたらどんなにいいだろう。
しかし、私はお断りした。初対面の人にスマホを渡すことに用心深くなったのだ。

 

ここにすべてが詰まっている。電話帳も、ラインのやりとりも、写真も動画も、PayPayも。決して人を信じていないわけではないが、もし滝修行を終えて、何らかの理由でその人が見つからなかったと思うと、滝修行以上に恐怖だ。

 

私は2人の方と連絡先を交換し「もしご自身のカメラで撮って、私に渡してもいい写真があれば送ってください」と伝え、滝修行に臨むことにした。

その中のお一人は立派な一眼レフを首から下げ、最前列に構えている素敵なお兄さんだった。始まる前にも動画を撮ってくれたり、いろいろフォローしてくださったりして、私は自分のスタッフのように気を許してしまったくらいだ。

 

一般の人の修行が終わったのが10:30ごろ。いよいよ出陣の時だ。

意気込みリポートを撮った後、意を決して滝に入る。毎年浴びているのに、やっぱりこの瞬間だけは怖い。滝の水圧に押され、私はよろけた。一瞬息が止まりそうになった。やばい。気合が入って勢いよく行き過ぎたかもしれない。

「やばい!」の瞬間 撮影:河上二朗

「怖い!」の瞬間 撮影:河上二朗

どうしよう、どうしよう・・・。どうもならない。

どうしよう、どうしよう・・・。行くしかない。

 

最初、滝は「敵」のような存在だ。いきなり叩きつけてくる、厳しく突き放そうとする。それに打ち勝とうと、私はそこに立ち続ける。

心を決めた! 撮影:北島正之

滝を浴びる前、実は邪念だらけだった。
5回も浴びていると、リポートする内容もマンネリ化してくる。
「浴びた後に何とコメントしようか?」という予定稿を頭に思い描いてしまう。

 

何も分からずに浴びた2012年の1回目、少し慣れた2014年の2回目、まだ若かった2015年の3回目。(そこから7年置いて)7年ぶりに浴びた2022年の4回目、そして今年5回目となる。

 

集大成になるかもしれないと思っていた。後悔しないように浴びようと思っていた。

浴び始めてから数分後、滝がまったく冷たく感じなくなった。
「あれ!?私、気持ちいいんだけど・・・」と思い始めた。
カメラマンがOKの合図を出しているのが見えるのだが、もう少しこの滝の中にいたいとすら思った。こんなことは初めてだった。

明治元年建設 六本滝

写真愛好家らが滝の周りを取り囲みます

 

私は滝の一部になっていた。
目の前に水があって、その水越しに多くの人の姿が見える。こんなに冷静に滝の奥の景色を見たのは初めてだ。一番厳しい世界にいるはずの自分が、一番守られている場所にいるような感覚を覚えた。冗談抜きであと30分ほど浴びられそうだと思うほど、快感に包まれていた。

 

浴びた後に何とコメントしようか?という邪念はすっかりなくなっていた。
毎年「冷たい」とか「顔が凍る」など、リアクション芸人のようなコメントをしていたのだが、今年は「すっごく気持ちいいんです。もっともっと浴びたくなるくらい気持ちよかった。こんな感覚、初めてです。」と、すらすら言葉が出てきて自分でも驚いた。

 

滝の周りを囲んでいた、多くの写真愛好家の皆さんが拍手をしてくれた。昨晩まで、いや、今朝まで、うじうじうじうじと思い悩んでいた気持ちが吹き飛んでいた。

撮影:河上二朗

着替えた後、駐車場の車に向かうとき、まだ体の中に水圧が残っていてふらふらした。
去年はお寺の中のお風呂を男女交代で使わせてもらったが(男子が上がってくるまでずぶ濡れで待っていた)今年は少し離れた場所にある温泉『大岩不動の湯』に浸かれることになっていた。「ゆっくりしてきてください」とカメラマンに言われ、女湯に向かう。

 

その温泉に浸かったとき、「44年間生きてきて、今が1番幸せかも・・・」と思えるほど、私の気持ちは高揚していた。

 

会社に戻ってからも休憩室のベッドに倒れ込む暇はない。VTRをチェックして原稿を書かねばならない。私は芸人やタレントではないので、滝行の後でも、アナウンサーが読む原稿は自分で書かなくては放送できないのだ。


私は「中田記者は大寒の滝修行は5回目だそうですが、この滝を浴びた年は、風邪一つひかず元気に過ごせているそうです」と、自分で書いた。

原稿を書いている最中に、連絡先を交換した1人のフリーカメラマンから、写真が送られてきた。河上二朗さん。目の前で私のお世話をしてくださったお兄さんだ。とても丁寧に撮ってくださっているのがわかる。

今年は自分用の写真は手元に残らないと思っていただけに、とてもうれしい。

撮影:河上二朗

アメイジングトヤマ写真部で一緒だった北島正之さんも現場に来ていた。「フェイスブックにアップしようと思うが、水にしたたった衣装が悩ましすぎてどう編集するか困っています(笑)」とメッセージが来た。

北島さんの作品は、長年見ている。ものすごくドラマティックな写真を撮られる方だ。

北日本新聞の読者写真コンクールにも、いつも秀逸な写真を出して選出されている。

 

私は「北島さんの写真が大好きなので、写真作品として北島さんが納得する形で発表なさってください。別に加工や編集をする必要もないと思います」と伝えた。

下手にトリミングしたり、ぼかしをかけたりしたら、余計にいやらしくなる。

 

アップされた写真は「さすが北島さん!」という感じだった。心配されているようないやらしさは微塵も感じなかった。

撮影:北島正之

撮影:北島正之 この切り取り方は、実に北島ワールド

 

撮影:北島正之

ときどき「透けていないか?」などと心配されるのであえて書くが、私は生地が厚いベージュのインナーを着ているので、危ないものが透けることはない。白装束の下に派手な水着などが透けると絵として美しくないし、私はあえて肌に近いベージュの下着を身に付けている。だから「裸なんじゃないか?」などと心配されるのだが、そうでもないのだ。

 

来週から10年に1度の寒波が襲来するらしいが、この滝修行を終え、私は怖いものがなくなった。「もう何でも乗り越えられそうだ!」と思った。

 

その日は大切な人の送別会があり、夜はそちらに出席した。
当初は「滝修行の後だから、元気が残っているかな。出欠の返事、どうしようかな…」などと迷っていたのだが、出席させてもらって本当に良かった。日頃話せない方たちと深い話もできたし、コース料理もとても美味しかった。

ここで送別会でした

白子が美味しかったぁ・・・💛

〆はミニミニブラックラーメン 富山ならではのコース料理

後日、カメラマンが「そういえば、送別会どうでした?あの後出たんですか?」と聞いてきた。

私は「もちろん!もうすっごい楽しくて…。しゃべったし、食べたし、挨拶までしちゃった」と答えた。

彼は「元気ですね。僕なんて滝浴びてもいないのに、家帰ってすぐ寝ましたもん」と言っていた。

 

そう、滝を浴びると本当に元気になるのだ。

お寺の方に聞いたところ、大寒以外でも1500円で白装束を借りれば、一年中滝修行ができるとのこと。勇気がある方は・・・どうぞ。

撮影:河上二朗 肩の荷が下りて、めっちゃ笑顔

こんな感じでみなさん白装束を着て挑みます