麗しい女
思いのほか、いい女に写った気がする。
ホテル日航金沢で食事をしたあと、ロビーで母に撮ってもらった写真のことだ。
さすがはホテル日航金沢。重厚でセンスのよい家具が、どすん、どすんと配置されている。
瞬時に「このソファに座ったら、いい感じの写真が撮れる」と思った。
写真の良し悪しは、主役3割、背景7割とも言われる。
他のお客様の邪魔にならないよう、スマホで2~3枚撮ってもらった。
ド素人の母がささっと撮った写真だったが、まあまあの完成度だった。
なんともオリエンタルな雰囲気。
後ろのヒョウが私の頭に食らいつこうとしている感じも、挑発的で実に良い。
私は「ちょっといい女風に撮れた笑 ホテルの内装がすばらしく…」と、ある男性に送ってみた。すると「ありがとう!麗しい」と返ってきた。
えっ!?私が、うるわしい!?!?
麗しい、うるわしい、う・る・わ・し・い・・
だいぶ古いが「お・も・て・な・し」の滝川クリステル風につぶやきながら、検索してみる。
『麗しい』
1 精神的に豊かで気高く、人に感銘を与えるさま。
2 形・色・容姿などが、目に快く映るさま。
「美しい」でも「キレイ」でもなく「麗しい」という言葉をチョイスしてくるそのボキャブラリー力よ。
私は豆腐の角ならぬソファのクッションに頭をぶつけ、嬉しさと興奮で悶絶死した。
思えばここ最近、女であることを楽しんでいなかった。夢も張り合いもない。
全く違う人生を歩んでみたくて「あぁ、女優になりたい。別人格を憑依させたい」と思いながら日々生きているほどの病み方である。
先日、母に滝修行の現場を見てもらおうと、大岩山日石寺に連れて行った。大寒の日はいかに滝を浴びるかしか頭になかったが、ゆっくり参拝してみると、実に見どころが多い寺である。
中でも気になったのは『女みくじ』なるおみくじだ。『しあわせを招く一言守入。ひとつひとつのおみくじに幸せへの祈りを託した「一言守」が入っています。それはあなたの行く道を照らす大切な言葉。御守として、大切にお持ちください』と書いてあるではないか。
行く道を照らしてくれるのか―。
ぜひとも照らしてほしい・・・。
あまりお守りやおみくじを買う方ではないのだけれど、あのときは藁をもつかむ思いでひいたのだ。
そうして出てきた言葉が『麗』だった。自分には無縁の一文字に心が躍った。
麗しの『麗』
1週間前にひいた女みくじと、男性の言葉がリンクする。
「麗しい、うるわしい、私は麗しい・・・」
カッサカサな心と身体に、潤いが巡ってくる気がした。
2023.2.11(土)18:30 ⛅