ayakonoheya’s diary

日々のことを、ありのままに

異動までの日々① 衝撃からのふわふわ期

 局長に「ちょっといい?」と呼び出されたとき、異動の内示だとはまったく思わなかった。私は編集している手を止め「はいは~い」と小会議室に入った。何の話だろう?後輩のことか?番組のことか?

 

 だから「異動です」と言われたときは、奈落の底に突き落とされたような感覚だった。今番組は調子が良い、人間関係も比較的良い、私は入社以来初めて自分の好きなことを思う存分している実感があった。だからあのとき、局長に対して「えぇっ!?マジっすか!?」と言ってしまった気がする。

 

 次に気になるのは「どこへ異動か?」ということだ。局長は「トヤマ」と言った。

ええ~!?次は奈落の底から、びよ~~ん!とバウンドして、地上に跳ね返されたような気がした。富山なのか!?もう二度とないと思っていた富山なのか。

 

 それなら話は変わってくる。それはそれでイイかもしれない。「富山ですか・・・」私は力が抜けて床にぺたんと座り込んでしまった。

 

 カメラがまわっているわけでもないのに。そしてオーディエンスは局長ただ一人だけなのに。私は小会議室でまあまあでかいリアクションを繰り広げた。

 第一印象は「異動は嫌だ。だが行先が富山ならそれほど嫌ではないぞ・・・」というものだった。

 

 私はこの日インターンの学生の対応をしていた。

「番組プロデューサーのお仕事」というタイトルで講演し、用意していただいた弁当を食べて、これから午後の部に入るというところだった。

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あの日見上げた空

 そういえば午前中は、4月からの番組の方向性についてもう一人のMプロデューサーと話をしていたところだった。ニュースや特番との兼ね合いで、番組スタッフがこれまでより少なくなる。シフトを組むのがかなりキツい。「人がまわらんよね。せめて▲▲さんをこっちのチームに入れたいよね。一緒に〇〇さんに訴えよう」などと話していたばかりだ。私自身も月2回担当している企画を、頑張って3回に増やそうかと思っていた。

 

 その日の午後、Mプロデューサーが上の人と話している現場に出くわした。「ほら、なかっさんも言いたいこと言いな」とうながされる。しかし朝の勢いはどこへやら。もう自分には関係のない世界だと感じ、人員確保大作戦のプレゼンには、まったく力が入らなかった。

 

 発表では誰にも話せない。Mさんは私が抜けることを知らない。

 私が抜けるとさらにスタッフのまわしがきつくなるだろうことは容易に想像ができた。「残される方ではなく、出ていく方で良かった・・・」と、思ったほどだ。

 

 内示から全社に発表されるまでの間が1番楽しかったかもしれない。

 目の前のトラブルとももうすぐ無縁になるという無責任さ、そして異動先での具体的な心配もまだないという気楽さ。

 

 いつも気を張り詰めている分、風船が宙に浮くような浮遊感を覚えていた。

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ふわふわ・・・

 私は新居のソファーで、新しい生活スタイルについて思いを馳せた。今回は2回目だから、1回目の赴任とは違う趣味を持とう・・・。1回目は写真、ガラス、プリザーブドフラワーを習ったけれど、今回はそれとはまったく違う世界を広げてみよう。

 

 そう思いながら、富山のジムを検索したり、アロマテラピーの資格について調べたりしていた。今思えば、この数日間が一番楽しかったのだ。

 

異動までの日々②につづく