ayakonoheya’s diary

日々のことを、ありのままに

調子に乗っている人

2020.6.21(日)晴れ

 

 人生、一度でいいから調子に乗ってみたいなぁと思いながら、一度も調子に乗ることなく42歳になった。

 

 調子に乗っている人を見ると、実に気持ちよさそうだ。「あぁ、あの人は調子に乗っているなぁ」というのが、手に取るようにわかる。

 

「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることもなしと思へば」

 

 かつて藤原道長が詠んだ有名な一句だ。「この世をわが世」と思えるなんて、どんなに気持ちがいいだろう。

 

 令和の世にも現代版・藤原道長は、老若男女問わずあちこちにいる。政治家、芸能人、著名人に限らず、生活していれば身近にもいる。「ここにも令和版道長がいるなぁ」と思いながら、私は冷ややかに、そして少し羨みながらそうした人物を眺めている。

 

 この世をわが世と思っているのだから、道長族は実に傍若無人だ。他人を下に見ている感じや、自分が1番と思っている感じが、言葉の端々、態度の端々に出る。それでも「人気があるから」「売れているから」「力があるから」という理由で、周りの人間は持ち上げたり、甘やかしたりする。

 

 かつて高感度NO1と言われていた女性タレントB。しかし私は不倫報道が出るずっと前から、彼女をみるとぞわぞわしていた。「明るく元気」をウリにしながら、その言葉の端々に計算高さが見え隠れしていたから。

 

 コントが面白く、コメント力も高い男性お笑い芸人W。「抜群に仕事ができる人だなぁ」と思いながらも、彼から温かみを感じることができなかった。

 

 調子に乗っている人間に対する嫉妬の気持ちは、古今東西変わらない。「あいつ憎し!」と思う勢力が、とんでもない仕事力で裏の顔を暴き出し、聖人君子ではないことを世に突き付ける。

 

 最近、平家物語に触れる機会があった。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」の一説から入るあの物語は、平家の栄華から没落までを描いている。

 

 藤原道長が栄華を誇った1018年。その100年後に誕生した平清盛は、急速に力を持ち独裁をはたらいた。公家、寺社、武士からの反発は多大なるものだったのだろう。

 

「驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し」(自分の地位や権利を笠に着る者は、そう遠くない将来に没落するものだ)というあの表現は、真面目に、調子に乗らず生きている人々の心の拠り所になったのだろう。

 

 いつの世にも鼻持ちならない人間はいるものだ。しかし、そうした人間の態度を真正面から正そうとするとかなり消耗する。「何と言って注意したらいいのだろう?」と考えるだけで、自分がすり減る。芸人Wの相方のコメントがすごく刺さった。「Wはぼくより全然売れてて、僕の方が立場が弱かった。それがあいつを甘やかした」

 

 傍若無人道長族や平家族は、時代を超えてもいるものだ。国家を動かすレベルでなくとも、それぞれの業界やコミュニティーに君臨する。やきもきすることも多いが、そこにエネルギーを使うよりは、大切な人との時間を楽しみ、自分を磨くことに意識を向けよう。

 

 「カチン」ときたときは「奢れる者久しからず」と、心の中で唱えてやり過ごそう。きっと自分が手を下さなくとも没落するだろう。歴史がそれを証明している。